以前ご紹介したコラムで埋没法の挙筋法と瞼板法について解説したのを覚えていらっしゃいますでしょうか。今回は埋没法の基本中の基本その2、線留めと点留めについてより詳しく解説していきたいと思います。
■留め方が全然違った!線留めと点留めの違いを徹底解説
そもそも埋没における線留め、点留めとはなんなのでしょうか。これらは文字通り、埋没の糸を瞼に『線状に留めているか点状に留めているか』という違いです。
図のように、点留めはつくりたい二重のライン上にポイントごとに糸を留めて二重をつくります。留める数が多ければ多いほど取れにくくなりますが、逆に言えば1つ1つのポイントは取れやすいとも言えます。
そして線留めはまさにお裁縫のようなイメージで、まぶたに糸を通して輪っかになるように留めることで二重を作ります。ポイントで留めていないので比較的狙った形でのデザインが作りやすく、編み込みを複雑にすることでより取れにくくよりデザイン性を高くすることもできます。
それではそれぞれの方法について、もう少し詳しくみていきましょう。まずは線留めから解説していきます。下の図をご覧ください。
図で見てわかる通り、線留めは1本の糸を編み込んで瞼に留めています。
こちらの図は当院が採用している糸玉が表側にくる方法で、当院で扱う埋没法の中で最も単純な編み込みをしているシングルループの施術方法です。まずまぶたの裏側から表側へと糸を通し、反対側の糸を黒目の上約1㎝程度の距離を取って糸を表側へ通すことで二重を作り出しています。(※赤い点は傷口です)
続いて点留めを見てみましょう。
比較がしやすいように、シングルループと同様傷口が表に2つできる2点留めを解説したイラストをご用意しました。
ご覧の通り、点留めは1箇所留めるのに糸を1本使いますので、2点留めであれば2本、3点留めであれば3本糸を使用することになります。線留めとは違い、ほとんどの場合糸1本(1点留め)ではきれいな二重をつくれない上にすぐに取れてしまうので、大抵は2点留め以上で施術を行うのが主流です。
また、以前のコラムでもご紹介した通り、点留めはすべて瞼板法となります。理由は挙筋(瞼を開け閉めする筋肉)で点留めを行うと眼瞼下垂のリスクが上がる為です。挙筋は強く糸を結べないので、取れやすくデザインも安定しません。その為、点留めでしっかりと二重のポイントを固定するためにも、安定した硬い組織である瞼板で埋没を行う必要があるのですね。
■点留め・線留めの特徴を客観的に知ろう
それでは線留め・点留めそれぞれの特徴を改めて確認してみましょう。
《点留め》
・作りたい二重のラインに合わせてポイントごとに糸を留める
・留める数=糸の数=糸玉の数
・留める点数が多くなれば取れにくくなるが、ダウンタイムも長くなる
・抜糸が線留めに比べて難しい
《線留め》
・作りたい二重のラインを裁縫のように編み込んで糸を留める
・編み込みが複雑なほど取れにくくデザイン性も高くなるが、ダウンタイムも長くなる
・複雑に編み込んでも糸玉の数は1つ
・編み込み方法の複雑性に関わらず使用する糸は1本
※糸の数や糸玉の数はクリニックごとに異なります。当院の線留めは糸1本で行います。
いかがでしょうか。これらが線留め、点留めそれぞれの特徴です。できるだけどちらかの方法に偏らずフラットに特徴を書いたつもりなのですが、皆さんもお気づきの通り線留めの方がメリットは多いです。点留めのおすすめポイントを書き出そうとしてみたのですが正直これと言って思い当たらず。。。。
二重を作る上の特徴だけでなく、万が一抜糸をしたいとなった場合にも点留めはあまりおすすめしません。というのも、大抵どこのクリニックさんでも『抜糸料金=抜糸する糸の数』であることが多いからです。
たとえば自然癒着法(線留め)はかなり複雑に編み込まれていて取れにくい方法なのですが、抜糸をする場合糸は両目合わせて2本です。反対に点留めはというと、一番スタンダードな2点留めを抜糸するとしましょう。そうすると、点の数=糸の数なので両目合わせて4本抜糸をしなければなりません。
抜糸をするにも少なからずまぶたに負担がかかるので、できる限りまぶたを触る回数を少なくしたいところ。線留めなら糸玉さえ見つかればどんなに複雑な編み方をしていても糸は1本なので瞼の負担は最小限ですが、点留めは留めた数だけ抜糸をするため、留めた数が多ければ多いほど瞼に負担をかけてしまいます。
そういった点からも、当院では糸1本の線留めを採用しています。
■線留めの糸玉はどこにできるの?
そもそも糸玉とは、埋没の糸を留める為の糸の結び目のことをいいます。これは線留めや点留めに関わらずどの術法でも必ずできるものです。クリニックによっては糸玉をまぶたの裏側にする方法を採用しているところもありますが、当院では表側に糸玉がくる『表留め』を採用しています。表留めの場合、当院では糸玉は目尻側に1つできます。
糸玉は術後しばらくはポコッと出ていて気になるのですが、埋没を経験済の筆者の感覚では術後1~3ヶ月程度は『触るとわかる』程度の凹つきはあったように思います。
ただ、目で見て分かるようなものではなかったので全く気になりませんでした。むしろ自分から整形をカミングアウトしない限り誰からも『埋没の目だ』とバレることはありませんでしたし、カミングアウトしても驚かれるくらいには自然な仕上がりです。
普段モニター撮影などで多くの患者様の目元を間近で見させていただいていますが、その方が埋没をしているかどうかは正直全くわかりません。これは先生でもわからないレベルなので、術後しばらく糸玉や凹つきが気になっているという方もご安心くださいね。埋没後1年以上経過した今、糸玉も凹つきも全く気にならなくなりました。瞼を閉じた状態で指で触ってみて『もしかしてこれが糸玉・・かな・・?わからん・・・』というレベルにはわからないです。
■糸玉の表留めと裏留めって何が違うの?それぞれのリスクを知ろう
当院では埋没の種類にかかわらずすべて『表留め』を採用しています。先ほどお話したように、クリニックによっては糸玉が裏側に来る方法を採用しているところもありますね。裏留めのメリットは糸玉が見えないこと、裏側にあるので当然触っても凹つきはありません。傷口も目立たないので、埋没後すぐに人と会う約束がある方などにはメリットといえるでしょう。しかしこのようなメリットがありながらなぜ当院が表留めを採用しているのか、みなさんには裏留めのリスクとともに知っていただけたらなと思います。
まず1番に知っておいていただきたい裏留めの重大なリスクは、眼瞼痙攣(まぶたの痙攣)です。実は裏留めはまぶたの開閉に重要なミュラー筋を傷つける可能性が高い施術方法です。ミュラー筋とはまぶたを開閉する時に瞼板を持ち上げる筋肉の1つで、このミュラー筋が傷つくことで眼瞼痙攣が起こると言われています。また、裏留めをした際の糸玉がこのミュラー筋の近くにできる為、瘢痕(しこりのような傷跡)がミュラー筋にできてしまうことでも眼瞼痙攣のリスクを上げています。
目は生きていくうえでとても重要な部位ですから、このようなリスクはできれば避けたいですよね。
裏留めのメリットは、先ほどお伝えしたように糸玉の凹付きが見えないことです。しかしこれは瞼の裏側に糸玉があるので当然のこと。でも考えてみてください。表留めでまぶたの表面に糸玉の凹付きが出るということは、裏留めは瞼の裏側に凹付きが出るということです。瞼の裏側ということは、凹付きがある部分が直接眼球に擦れるということになります。
これはどういうことかというと、目のごろごろ感や違和感、充血などの症状が長い間続くというリスクがあるということです。
もちろん時間経過で改善していく方もいますが、具体的に何日で改善するとは断言できません。傷の治りが人によりそれぞれ違うのと同じで、体質などにより改善する方もいればずっと続く方もいるからです。まぶたの表側であれば、たとえ凹付きが長期間あったとしても『触らなければわからない』のですが、裏側は常に眼球とまぶたの裏側が触れ合っています。
この辺りは患者様それぞれの感覚や価値観により変わるとは思うのですが、多くの方は長期間目がゴロゴロしたり、まぶたが痙攣したりするリスクを抱えるよりは表側に糸玉が来るものの、触らない限りわからない表留めを選ばれるのではないでしょうか。稀に目で見て凹付きが分かる方もいらっしゃいますが、じっくり観察しない限りわからない程度のものです。
人間の目はおよそ3秒に1回瞬きをしていると言われています。まじまじと観察すればわかるかもしれませんが、他人から見た時、その一瞬でまぶたに凹付きがあるな、と判断できる人はまずいないでしょう。もちろん『他人からどう見られるかではなく自分が気になる!』という方もいらっしゃるとは思います。しかしクリニックとしては、できるだけ目に負担をかけず、ダメージが少ない施術を選んでいただきたいのです。
一部のクリニックを除き、多くのクリニックが表留めを採用しているのにもこの辺りが理由なのではないでしょうか。
長くなってしまいましたが、今回のコラムは以上です。線留めや点留め、挙筋法や瞼板法など、種類が多すぎてよくわからないという方も、これでほんの少しでも埋没法に詳しくなっていただけたのではないでしょうか。
埋没法は切開を伴わないので世間的には『プチ整形』と言われています。しかしどれだけ『簡単な手術』と言われても、埋没が初めて、整形が初めてという方には不安はつきものですし緊張しますよね。切開とは違い抜糸をすれば元の目戻れるとはいえ、お金を払っている以上失敗はしたくないですし、できる限り不要なリスクも抱えたくないはずです。
埋没をしたいという患者様の多くは10代~20代の患者様です。知識がないまま安い施術に釣られてしまったり、リスクをよく考えないで施術を選んでしまう方も多くいらっしゃいます。安さや一時的なきれいさも大事ですが、ご自身の身体のことなのでリスクの知識もしっかりと身に着けたうえで、患者様ご自身で取捨選択をすることはとても大切なことです。今後はぜひ、当院のコラムを『施術選び』『クリニック選び』に役立てて頂けたらうれしいです。